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店主がマイペースに書く、カレーとインドとその他のこと。
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≪ ミールスを終えて ≫


 “チェティナード”

この言葉を初めて聞いたのは約十年前、
渡辺玲さんや浅野哲哉さんの著書で、
触れられていたのがきっかけでした。

その後、タミルナードゥ州のチェンナイなどの都市部で
チェティナードを名乗るレストランやチェティナードと名の付くカレーは
意識して食べてきましたが、スパイスが強すぎたり、かなり辛かったり、
塩が強すぎたりと、、、自分の好みの味には出会えませんでした。

より本物を味わうために、
4、5年前から毎年現地やその周辺地域を訪れるようになり、
理想の味に出会うことができたことと同時に、
都市部で食べるチェティナード料理の過剰な辛さやスパイス使いに
疑問も出てきていました。

スパイスを増やしてただスパイシーにしたり、
なにか特殊なスパイスを使うことだけがチェティナードというわけでもなく、
ジビエ的な食材を使えばなんでもチェティナードというわけでもないことも
食べ歩いていくうちにわかってきました。

ノンベジだけでなくベジのトラディショナルな料理にも個性があったりと、
見て聞いていた情報だけではたどり着けなかった料理とも出会えました。

いつかチェティナードに特化したミールスをやろうと
数年前から頭の中だけで描いていたものが今回できてよかったです。



しかしこれは第一弾。

出し切れなかったアイテムがまだあるのですが、
もう少し試作して、世に出れるようになったら第二弾をしたいと思っています。


一度でも食べていただいたお客様、ありがとうございました!



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遅ればせながらはいつものことですが、
今回のミールスの説明をさせていただきます。
 
 
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Uppu Kari     <マトン・ウプ・カレー>

丸型チリ、Gundu Milagaiの香りとその見た目のような丸みを持った辛味が
完全に主役になっている一品です。
それ以外のホールスパイス1種、パウダースパイス1種のみ、
というのも男気があっていいんです。

現地で初めてこのカレーを習った際、
材料の少なさとその調理法にはやはり驚きました。
仕上げに、よりスパイスを足すことで複雑さは出せますが、
はっきりとしたこのあたりの味わいがベスト。

ただ、大量のチリの皮と種を分ける作業と、
オイルで芳ばしくチリを炒めていく際、
キッチン内は大変なことになりますが、、。

この香りと力強い匂いを嗅ぐたびに、
同じようにみんなで咳込んでいた、
現地のあのキッチンを思い出します。




 


Kongunadu Meen Kozhambu  <コングナード・フィッシュ・コロンブ>

このレシピや雰囲気はチェティナードとは違いますが、
近隣エリアということで今回抜粋してみました。
フィッシュカレーといえば、当たり前のように南インドの海沿いの町で
良く食べられていますが、山あいの町や標高がすごく高い場所でなければ
ほとんどの場所で食べれます。

魚の鮮度は海沿いの町に分があるとしても、
グレイビーの濃度や酸味や味付けは
その場所によるので好みは分かれます。

昔、マドゥライのレストランで食べた
kongu kozhi curry(コング・チキン・カレー)
僕がコングナードを意識したきっかけとなった一品でした。
インドでお気に入りの店はたくさんありますが、
顔も認識しているお気に入りのシェフは少ないなか、
ここのシェフの味が好きで、毎年必ず訪れてもいるレストランでもありました。

しかし実際のところ、チェティナードに比べ、
とびぬけた特色のないコングナードのスタイルはたまに試作をしても
お店で出すインパクトにはかけていました。

タンジョール出身の知り合いのシェフにここの地域の料理に関して尋ねたときも、
「マイナーな料理だし、あまり美味しくないよ」という返答でした。

スパイスの種類も量もチェティナードに比べるとシンプルかつ控えめな印象。
kongunaduのkonguはnectar(果汁)やhoney(蜜)という意味あいからも、
マイルドで甘味さえ感じるようなイメージ。

どちらかというとターメリックの量が多かったり、
ナッツやドライココナッツを多めに使用する調理法もみられ、
もったりとしたグレイビーの印象もあったりと。

チェティナード・フィッシュという選択肢が妥当なところでしたが、
やったことのないコングナードで攻めるべきだと思い、
味の調整をしていきました。

今回はシャープな酸味やココナッツの爽やかな香りは控えめですが、
冬の今の時期に合った落ち着いた色合いと、
奥行きのある味わいのカレーになりました。

このタミルの内陸的なフィッシュカレーには
脂ののった身の厚い鰤との相性がよかったです。

 



Eraal Rasam <プラウン・ラッサム>

2013年の期間限定ミールスでもお出ししたエビのスパイシースープ。
現地で教わったナンドゥラッサム(カニのスパイシースープ)のレシピを
アレンジして作りました。
ノンベジ、特に魚介系のラッサムは
現地のどこでも簡単に出会えるものでもないので、
前回に引き続き、メニューに入れました。

香りのメインは芳ばしいニンニクと
仕上げにかけたロングペッパー。

 
  
  



Mor Kozhambu  <モール・コロンブ>

ココナッツを主体にバターミルクの酸味を加えた白いカレーソース。
白い蕪とロビア豆を具材に、冬を意識した一品です。
少し多めのオイルでテンパリングし、コクをプラスしました。





Vegetable Samber <ベジタブル・サンバル>

カライクディスタイルのコクのあるサンバルポディがベース。
季節の根菜類の出汁をしっかり使った、冬のサンバルです。
江都青長大根、紅くるり大根、紅化粧大根、黒丸大根、味いちばん紫大根、、、
気づけば大根率が高かった冬のサンバルでした。

静岡から届いた無農薬の野菜たちが活躍しました。
  
 


 



Calamari Varuval  <マサラ・カラマリ・フライ>

varuvalとはフライのこと。
南インドの食堂なんかでは、芳ばしく揚げられた魚のフライを
ミールスとは別に単品注文している姿を目にします。
今回のミールスでは魚ではなくスルメイカを使いました。

スパイスと豆をパウダーにしたマサラペーストに漬けて、
芳ばしく揚げたノンベジスナックは前菜に。
 
甘味のある旬のキクイモのフライも添えました。







Kosmali <コサンマリ>
 
茄子とジャガイモをマッシュした滋味深いスープ。
現地では温かいスープをイディヤパム(米から作るそうめんみたいなもの)
と合わせて食べるのが主流なんですが、
引き締まった味わいの冷製タイプが砂の岬の定番。

スパイスは一種類のみ。
完全に素材が主役。
こういうインド料理に僕はいつも魅かれてしまう。







Kavuni Arisi Payasam <ブラックライス・パヤサム>

日本のインド料理店でもたまに出てくる、
白米をミルクと砂糖で煮込んだ、白くて甘いインドのデザート。

以前、カルナータカ州で食べたラギ(ragi、シコクビエ)のパヤサムが美味しくて、
今まであまり好きではなかったパヤサムに対しての意識が変わりました。

そして、現地でチェティヤールの邸宅でごちそうになった、
ブラックライス(kavuni Arisi、黒米)のパヤサムはラギよりもインパクトがあって、
今回のミールスのコンセプトにぴったりでした。

爽やかな甘さと、綺麗なパープル、
そして、和菓子的な要素もある味わいに、
反応されるお客様がかなりいらっしゃいました。

表面に飾った白いココナッツとキミドリ色のピスタチオは、
信仰心の深い現地インド人の額のペイントをイメージして。
 
 


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