店主がマイペースに書く、カレーとインドとその他のこと。
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4年前、一軒の宿を目指した。
紅茶農園とスパイスプランテーションが広がる地域の小さな村からまだ山奥へ登り入っていったところに、突然現れる歴史あるバンガローをセンス良くリビルドしたヘリテージホテルに泊まったのが始まりだった。






それから毎回必ず一回の旅の中に(無理やりにでも!?)山の中のバンガローに滞在することにしている。

そして、楽しみはバンガローだけではない。
標高とともに自然の景色や家の作りや人々の生活風景が変わっていくそこまでの道のりも、大きな楽しみのひとつだ。





















 





紅茶畑が広がる山あいの町で飲むチャイはもちろん美味しいんだけど、
紅茶農園を所有する、バンガローで出してくれるミルクティーのほうが、
確実に僕らの理想の味に近い事もよくある。



たまに宿でミルクティーを頼もうとすると、気を使ってくれてか、
「インディアンミルクティーにしましょうか?マサラは入れますか?」などと聞いてくれることもよくあるが、
今までの経験上、紅茶エリアではミルクティーとして飲んだほうがいい。
渋めに入れてもらった紅茶に温かいミルクを少し控えめに入れ、砂糖を少し多めに入れて自分の好きな味を作る。
テラスに座り、目の前に広がる茶畑や自然の山々を眺めながら飲むミルクティーはとても贅沢な時間。

 




バンガローではインド料理かコンチネンタルを選択するケースやあらかじめミックスメニューの場合もある。
もちろんインド料理を食べるのだが、インドでは貴重な焼きたての美味しいクロワッサンやオーブンで焼いたパイなどの料理も風格のある山の上のバンガローにはよく似合う。

イギリス植民地時代の名残を感じながら宿で過ごすのも、僕にとっては特別な時間だから。
 
  

 

タミルのニルギリ丘陵の紅茶が有名な山あいの町、バルパライに向かった。
もこもこと愛らしく、深い緑から薄く綺麗な緑の茶畑が自然のグラデーションをみせてくれる。
ほんのり香る茶葉の青々しい匂いは懐かしくて、わくわくするけど、なぜか落ち着く。

 

なぜこんなに紅茶畑や森や川や湖を見ると、わくわくするのか。。
思い返せば幼少期の体験があった。


静岡の田舎で育った。
毎年、5月にはお茶刈りが始まる。
お茶農家の祖父母の手伝いをしに、所有するお茶畑にいくのが、小学生の時の恒例行事だった。
積んだ茶袋を持ち、トラックの荷台に乗せ、そのまま自分も荷台に茶袋のように積まれお茶工場に行く。
蒸した強いお茶の香りと、工場の機械の匂いが交じったお茶工場がなぜか好きだった。

 

よく一人で川に釣りに行った。
先客がいると気になってしまうから、人のいない場所を探した。
どんどん奥へ、まだだれも糸を垂らしたことがない場所をさがし,
静かな空間でじっくりと釣りしながら、一人の時間をよく味わっていた。
 
 


原風景のある場所へ。

インドをこれからもより深く。

 
 






ポラーチからより奥へ。
ココナッツツリーの森の中へと入っていく。



”オーガニック”
今回の旅でも本当によく聞いた。
宿のオーナー、ホテルのシェフはもちろん、町の生地屋さんやたまたま出会った人からも、、。

そういう理念や意識をもったインドの人々に出会う機会はとても貴重だ。

それは当たり前のように、年々、どこの国でも同じ事が言えるかもしれないが、
僕が見てきたインドはそれがなかなかむつかしい。

実はその逆もあって、
想像以上に農薬まみれの野菜を懸念するインド人にも沢山あってきたからかもしれない。
ある人は、インドではまだ稀なオーガニック食材専門のスーパーでさえ、すべては違うと言っていた。

インドで、いわゆるカレーとして食べる野菜は美味しいのか?と聞かれると、
正直、わかりずらかったのが事実。
スパイスを使うということや、数種の野菜しか生で食べなかったり、、。
後、一番は調理法にある。
僕の今までの体験の中では、インドでは想像以上に野菜を炒めたり、煮込む。
素材は柔らかいのが一般的だし、煮崩れるのもOK。(それが必要なテイストのものもある)
そこにしっかり、スパイス、そしてスパイスや玉ねぎ、トマトなどを炒めて作ったマサラの味が浸みこんでいるから、ダイレクトに野菜自体の味はわかりづらい面もある。
でもこれがインド料理に合う調理だとも思うのも事実。

でも、このエリアで食べる野菜は美味しく感じた。野菜自体の味が見えやすかった。
そしてもちろんピュアベジの方が作る、代々家庭で伝わってきたレシピということもあって、素直で説得力のある味だった。


宿泊したコテージでは、オーナー自らがリーフミールスを作ってくれた。
とにかく驚いたのが、彼はシェフでもその経験もない事。
ただ、料理が好きでいろんなレシピを探りながら趣味で作っていた。
味はもちろん、それぞれのカレーの色の配分と盛り付けのバランス、そして何よりビジュアルがいい。
ピックルなんかも週種類常に作りストックしてあるあたりも面白くて、
グーズベリーなど他にも料理好きの家庭でないと見れない種類のものもあって、とてもいい体験ができた。


 


インドネシアの旅を終え、次はインド。
今回のインドは約2週間という砂の岬にとっては少し短い期間。
南インドのタミルナードゥだけの滞在にし、
その分、より目的を絞ってじっくりと旅をした。


 
ケララとの州境にほど近い田舎町、ポラーチ。

これといっての観光スポットや食べ物に関しても特化したものがないイメージの場所だったため、今まで訪れることはなかったが、見渡す限りの質のいいココナッツツリーと豊かな穀物、そしてのどかな田園風景が印象的だった。

 
外を歩くとMillet(キビ)の穂が体につくほど、フワフワと舞っていた。
ここで食べたキビのパチャディは初体験だった。

 .
Wheat Rava Idly(ラバ・イドゥリ)
通常のイドゥリより酸味はなく、どっしりとした弾力でフェイクミートの感覚。

Elumichai Sandhagai(レモン・サンガーガイ)
米粉から作られた素麺をスパイスで炒めてレモンの味でまとめてある。

Ragi Dosai(ラギ・ドーサ)
シコクビエ粉で作ったドーサ。
通常のドーサが”うどん”だとしたら、こっちは”そば”のような感じ。
そばが好きな僕はもちろん後者のほうが好き。

Millet Pachadi(ミレット・パチャディ)
キビのヨーグルトサラダ。プチプチとした食感が面白い。
インドの普通の食堂ではなかなかお目にかかれない一品。




コングナード・エリアに入るここポラーチ。
それ以外の炒め物やグレイビーものでは、ココナッツとターメリックの使用量が目立つ調理法が印象的だった。
柔らかな色合いのグレイビーのように、マイルドな味わい。





 

Kothamalli sadam(コリアンダー・ライス) 
ショウガのアクセントとコリアンダーリーフとグリンチリの爽やかな”青い”香り。

Beetroot sadam(ビーツ・ライス)
ビーツの持つ野菜の自然な甘味。そして美しビジュアル。


このようにライスバラエティもしっかり美味しかった。
南インド特にタミル、ピュアベジタリアンの食べ物としての一品。
例えば、、
中~高級レストランでは、ポリヤルやクートゥーなどのスターターアイテムと同じタイミングで、バラエティライス(ココナッツライスやトマトライスなど、様々な味付けのライス)をサーブし、そのあとに白いご飯が出てくるパターンだったり。
庶民的な食堂では、食べる時間帯によっては少しのスナックとバラエティライスだけだったり。

ビリヤニやプラオは今では日本でも知られるようになってきたが、
南インドのピュアベジの現場ではバラエティライスも現地で好まれている。




のどかな村にひっそりとたたずむたった4人の従業員の小さなホテル。
料理担当のマナカンダンさんは最後までキッチンから出ることがなかった。
タミル語のみのやり取りでも何も問題ない。
料理している時の彼の姿や表情で、僕と料理で心が通じたのも肌で感じることができたから。


日本で再現することで、彼に恩返しをしたい。

さあ、試作が楽しみになってきた。
 



桑原茂一さんのラジオ、
Pirate Radioで自身の人生に影響を与えてくれた音楽を選曲しました。


その選曲の理由と思い出を少し添えて、
改めて書き出してみました。



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Muriel Winston / Children's Trilog


今でも僕が一番好きなレーベル、Strata eastからの一枚。
彼女の太くあたたかい声と子供達の愛くるしいコーラスで出来上がったこの曲をかけると、店内の雰囲気がぐっと良くなる気がしている。
今思えば、砂の岬で一番かかっているレコードかもしれない。



Calm/Authentic Love Song


この人の音楽に出会っていなかったら、僕の音楽に対する接し方や感じ方は偏ったものになっていたかもしれない。
愛があって心に響く音はメジャーもマイナーも関係ない。
音楽は流れるように消費するものではなくて、その音と少し向き合って、接してあげる事で、より美しく心に残る事がある。

ファラオサンダースのLove Is Everywhere をさりげなくも美しく昇華させつつ、Authentic Love Songという僕にとって奇跡の一曲になった。



Kip Hanrahan / India Song


クールでアヴァンギャルドなサウンド、
都会の闇の緊張感は鋭く色気もあって、、。

彼の音楽はとにかくかっこいい。
僕はキップが作り出す空気感に憧れて、まだお店を持つ前に、
砂の岬の空間にこの人もつ空気感も入れたかった事を思い出した。


カルロス・ダレッシオのものも素晴らしいけど、
気だるく、そしてしっとりと歌うこっちのヴァージョンがいい。
そしてやっぱり、"india song"っていう名前の響きがいい。
 
 

Robert Wyatt / Shipbuilding


ある夜、彼は酒に酔って転落し、下半身付随になった。
足が使えなくなった車椅子のドラマーは、諦めなかった。
運命とはこういうものなのか、、でも、
彼の歩んできた人生が声とメロディーからいつも伝わってくる。

 
ちょうど20代半ば、僕はレコード屋を持つ夢を諦めた。
苦しい時期だった。
そんな時によく聴いていた曲だった。
聴いて道が開かれたわけでもなく、心が明るくなるわけでもないけれどこの時期は寄り添うように、ただよく聴いていた。



Shamek Farrah And Folks / La Dee La La Song

 
20才の頃働いていたカフェで、オーナーがかけるたびに気になっていた一枚。
生活するのがやっとだった当時の自分には到底、手の届かない雰囲気はジャケットからも感じていた。
レコード屋で働く事になり、カフェを卒業する日が近づいていたある日、オーナーは僕にレコードを破格の値段で譲ってくれた。
その日は何故か、少し大人になったような気分だった。



John Coltrane / Say It


名曲は多々あれど、フリー、スピリチュアルな演奏に向かって行く時期のコルトレーンのこのアルバム、そしてこの曲は特別なものに感じている。
最後のお客様が帰りバータイムの営業が終わり片付けに入る時、当時の店長がよくかけていた一枚だった。
美しく優しい音色のラブソングは身体の力がスッと抜け、程よい疲れとともに、なにげない先輩達の話しを聞く時間が好きだった。

 
 

Antony And The Johnsons / Hope There's Someone


Hope There's Someoneを歌い出してすぐに涙がでた。
そして、コンサートの終わりまで涙が止まらなかった。
こんな経験は生まれて初めてだった。

まだ移動販売の頃、ヒマラヤをトレッキングするために滞在していたネパール。1日のうち、7割くらいの時間停電が当たり前だった時期に、なんとかインターネットカフェから妻がコンサートのチケットを予約したシチュエーションも小さな思い出。
 



桑原茂一さんのラジオ「Pirate Radio」
8月26日(金)23:00~放送。

砂の岬の店主、鈴木克明が
自身の人生に影響を与えた10曲を選曲しました。

→ Pirate Radio  ー砂の岬ー
   
   

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楽しい時も、苦しい時も、思い返せばその時の思い出の一枚があった。
もちろん、たった10曲では全然収まるわけがなくて、、。
でも、これらの曲を聴けば、これから先もいろいろ乗り越えていける気がした。
 
僕の人生は、きっとうまくいく。
そう願いつつ。。

 
 
The Boom /  砂の岬
Muriel Winston / Children's Trilog
Calm / Authentic Love Song
Duke Jordan / No Problem
Jerome Richardson / No Problem
Shamek Farrah And Folks / La Dee La La Song
Kip Hanrahan / India Song
Antony And The Johnsons / Hope There's Someone
John Coltrane / Say It
Robert Wyatt / Shipbuilding
Shamek Farrah And Folks / Waiting For Marvin
 

 


 
選曲理由やそれぞれの思い出などは、
インドに行っている最中に書いて見ようと思います。
 
  
茂一さん、
この機会を、ありがとうございました。

音楽がまた、好きになりました。


砂の岬
鈴木克明




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≪ ミールスを終えて ≫


 “チェティナード”

この言葉を初めて聞いたのは約十年前、
渡辺玲さんや浅野哲哉さんの著書で、
触れられていたのがきっかけでした。

その後、タミルナードゥ州のチェンナイなどの都市部で
チェティナードを名乗るレストランやチェティナードと名の付くカレーは
意識して食べてきましたが、スパイスが強すぎたり、かなり辛かったり、
塩が強すぎたりと、、、自分の好みの味には出会えませんでした。

より本物を味わうために、
4、5年前から毎年現地やその周辺地域を訪れるようになり、
理想の味に出会うことができたことと同時に、
都市部で食べるチェティナード料理の過剰な辛さやスパイス使いに
疑問も出てきていました。

スパイスを増やしてただスパイシーにしたり、
なにか特殊なスパイスを使うことだけがチェティナードというわけでもなく、
ジビエ的な食材を使えばなんでもチェティナードというわけでもないことも
食べ歩いていくうちにわかってきました。

ノンベジだけでなくベジのトラディショナルな料理にも個性があったりと、
見て聞いていた情報だけではたどり着けなかった料理とも出会えました。

いつかチェティナードに特化したミールスをやろうと
数年前から頭の中だけで描いていたものが今回できてよかったです。



しかしこれは第一弾。

出し切れなかったアイテムがまだあるのですが、
もう少し試作して、世に出れるようになったら第二弾をしたいと思っています。


一度でも食べていただいたお客様、ありがとうございました!



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遅ればせながらはいつものことですが、
今回のミールスの説明をさせていただきます。
 
 
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Uppu Kari     <マトン・ウプ・カレー>

丸型チリ、Gundu Milagaiの香りとその見た目のような丸みを持った辛味が
完全に主役になっている一品です。
それ以外のホールスパイス1種、パウダースパイス1種のみ、
というのも男気があっていいんです。

現地で初めてこのカレーを習った際、
材料の少なさとその調理法にはやはり驚きました。
仕上げに、よりスパイスを足すことで複雑さは出せますが、
はっきりとしたこのあたりの味わいがベスト。

ただ、大量のチリの皮と種を分ける作業と、
オイルで芳ばしくチリを炒めていく際、
キッチン内は大変なことになりますが、、。

この香りと力強い匂いを嗅ぐたびに、
同じようにみんなで咳込んでいた、
現地のあのキッチンを思い出します。




 


Kongunadu Meen Kozhambu  <コングナード・フィッシュ・コロンブ>

このレシピや雰囲気はチェティナードとは違いますが、
近隣エリアということで今回抜粋してみました。
フィッシュカレーといえば、当たり前のように南インドの海沿いの町で
良く食べられていますが、山あいの町や標高がすごく高い場所でなければ
ほとんどの場所で食べれます。

魚の鮮度は海沿いの町に分があるとしても、
グレイビーの濃度や酸味や味付けは
その場所によるので好みは分かれます。

昔、マドゥライのレストランで食べた
kongu kozhi curry(コング・チキン・カレー)
僕がコングナードを意識したきっかけとなった一品でした。
インドでお気に入りの店はたくさんありますが、
顔も認識しているお気に入りのシェフは少ないなか、
ここのシェフの味が好きで、毎年必ず訪れてもいるレストランでもありました。

しかし実際のところ、チェティナードに比べ、
とびぬけた特色のないコングナードのスタイルはたまに試作をしても
お店で出すインパクトにはかけていました。

タンジョール出身の知り合いのシェフにここの地域の料理に関して尋ねたときも、
「マイナーな料理だし、あまり美味しくないよ」という返答でした。

スパイスの種類も量もチェティナードに比べるとシンプルかつ控えめな印象。
kongunaduのkonguはnectar(果汁)やhoney(蜜)という意味あいからも、
マイルドで甘味さえ感じるようなイメージ。

どちらかというとターメリックの量が多かったり、
ナッツやドライココナッツを多めに使用する調理法もみられ、
もったりとしたグレイビーの印象もあったりと。

チェティナード・フィッシュという選択肢が妥当なところでしたが、
やったことのないコングナードで攻めるべきだと思い、
味の調整をしていきました。

今回はシャープな酸味やココナッツの爽やかな香りは控えめですが、
冬の今の時期に合った落ち着いた色合いと、
奥行きのある味わいのカレーになりました。

このタミルの内陸的なフィッシュカレーには
脂ののった身の厚い鰤との相性がよかったです。

 



Eraal Rasam <プラウン・ラッサム>

2013年の期間限定ミールスでもお出ししたエビのスパイシースープ。
現地で教わったナンドゥラッサム(カニのスパイシースープ)のレシピを
アレンジして作りました。
ノンベジ、特に魚介系のラッサムは
現地のどこでも簡単に出会えるものでもないので、
前回に引き続き、メニューに入れました。

香りのメインは芳ばしいニンニクと
仕上げにかけたロングペッパー。

 
  
  



Mor Kozhambu  <モール・コロンブ>

ココナッツを主体にバターミルクの酸味を加えた白いカレーソース。
白い蕪とロビア豆を具材に、冬を意識した一品です。
少し多めのオイルでテンパリングし、コクをプラスしました。





Vegetable Samber <ベジタブル・サンバル>

カライクディスタイルのコクのあるサンバルポディがベース。
季節の根菜類の出汁をしっかり使った、冬のサンバルです。
江都青長大根、紅くるり大根、紅化粧大根、黒丸大根、味いちばん紫大根、、、
気づけば大根率が高かった冬のサンバルでした。

静岡から届いた無農薬の野菜たちが活躍しました。
  
 


 



Calamari Varuval  <マサラ・カラマリ・フライ>

varuvalとはフライのこと。
南インドの食堂なんかでは、芳ばしく揚げられた魚のフライを
ミールスとは別に単品注文している姿を目にします。
今回のミールスでは魚ではなくスルメイカを使いました。

スパイスと豆をパウダーにしたマサラペーストに漬けて、
芳ばしく揚げたノンベジスナックは前菜に。
 
甘味のある旬のキクイモのフライも添えました。







Kosmali <コサンマリ>
 
茄子とジャガイモをマッシュした滋味深いスープ。
現地では温かいスープをイディヤパム(米から作るそうめんみたいなもの)
と合わせて食べるのが主流なんですが、
引き締まった味わいの冷製タイプが砂の岬の定番。

スパイスは一種類のみ。
完全に素材が主役。
こういうインド料理に僕はいつも魅かれてしまう。







Kavuni Arisi Payasam <ブラックライス・パヤサム>

日本のインド料理店でもたまに出てくる、
白米をミルクと砂糖で煮込んだ、白くて甘いインドのデザート。

以前、カルナータカ州で食べたラギ(ragi、シコクビエ)のパヤサムが美味しくて、
今まであまり好きではなかったパヤサムに対しての意識が変わりました。

そして、現地でチェティヤールの邸宅でごちそうになった、
ブラックライス(kavuni Arisi、黒米)のパヤサムはラギよりもインパクトがあって、
今回のミールスのコンセプトにぴったりでした。

爽やかな甘さと、綺麗なパープル、
そして、和菓子的な要素もある味わいに、
反応されるお客様がかなりいらっしゃいました。

表面に飾った白いココナッツとキミドリ色のピスタチオは、
信仰心の深い現地インド人の額のペイントをイメージして。
 
 



 
 
 

 
Shadow Of The Earth」

僕がこの音楽に触れたのが20歳のころ。
まだ大阪にいたころ、当時レーベルをしていた先輩が聞かせてくれた、
世に出る前のデモテープが最初だった。

興奮する先輩を横目に僕はこの時、
この音楽の良さがしっかりと分かっていなかった。
当時はまだジャズやソウルなどを聞き始めたばかりの頃で、
この繊細で美しい音楽に、ついていくことができなかったんだろう。


この記念すべきファーストアルバムがリリースされてから、
当時の働いていたカフェバーの店長が、
夕方から夜にかけて、よくこのアルバムをかけていた。

ダブやフォークや音響的な音を選曲していたカフェタイムから、
モーダルなジャズやスピリチュアルなジャズを主にかけていたバータイムを
全く違和感なくつないでいくような、、
いや、それ以上にジャンルレスな美しい音世界をもっているこのアルバムと
アーティストのCALMさんが気になってしょうがなくなってきていた。




 
 
「Moonage Electric Ensemble」

お店でいろいろな素晴らしい音楽に触れていくうちに、
僕の中で好きなメロディや空気感が少しづつ形成されてきたころ、
セカンドアルバムがリリースされ、
僕は身も心もこの人の音楽の大ファンになっていた。
発売してすぐに購入したアナログ盤を毎日毎日聴いては、
心が熱くなっていたのを今でもよく覚えている。






「The Cowardly Boy Ain't Stand Alone At Yebisu The Garden Hall」

恵比寿ガーデンプレイスでのライブは衝撃だった。
Light Yearsが演奏されている間、涙が止まらなかったのはなんでだろう。
超満員のライブホールの熱気とライブパフォーマンスに圧倒された。
 
インドカレーに出会ってからのここ10年は
いろんなライブに行くことはほとんどなくなったけど、
今まで生きてきた中で見たライブで、
やっぱり一番だったと、あらためて思う。
 
 
 


先日いただいたNEW ALBAM、

 
 
 「from my window」

かなりいいです。


 
毎日のように店でかけているのですが、
聞けば聞くほどまだまだじわじわと、
美しいメロディーやアルバム全体の世界感や空気感に
引き込まれていきます。

本当に残っていく音楽とは、
愛情をこめて作られたこういうものように感じます。





最後に、、




「bound for everywhere」

この音楽愛に包まれた極上のガイドブックは
今でも僕のバイブルです。
  
  
  
  
 Unseen small steps....
 
  

  

お店が始まってから
3度目となる期間限定のミールス。

2015年度は、ほぼ南インドのアイテムで構成し、
メインのカレーたちも新しいものを届けることができました。


昨年は2階席の予約も始まり、
日々の営業を乗り切る事が手一杯、
何度か試作をしても今までのカレーの味に肩を並べるのが難しく、
立派な一品として仕上げるための時間がありませんでした。


今回、新メニューに関しては
「営業しながら日々、味を詰めていく」ことで、
なんとか4種類リリースすることができました。

ラッサム、クートゥー、ポリヤル、パチャディ、アチャールなどの
基本のセットの組み合わせも、野菜や豆のバリエーションに加え、
色や食感に変化をつけるような組み合わせを意識しました。

、、、、、、

いつもこんな風に、
ミールス期間がすでに終わり、
申し訳ないくらい "遅ればせながら" なんですが、
ミールスの内容を少し説明したいと思います。






<コダグ・パンディマサラ>




2年前にカルナータカ州の山あいの町、
マディケリに行きました。
目的はコーヒープランテーションに加え、
豚肉のカレー”パンディカレー”を食べることでした。
インドで豚肉というと一部の地域や宗教の関係で、
食材として使われることは稀ですが、
滞在した宿で見せてもらったスパイスのロースト加減が面白く、
「芳ばしさと少しの酸味」をイメージして仕上げていきました。




<ミーントリヴァンドラム>

ケララの南部、トリヴァンドラムの家庭で教わりました。
3~4種類のみのスパイスと少しの玉ねぎにコクムのワイルドな酸味。
という本当にシンプルなレシピだったので、材料それぞれの量や細かな工程を丁寧に仕込み「苦味と辛味」をポイントに作りました。
全くポップでなく、わかりにくい味のため日本での再現は正直やようとも考えましたが、
なじみの魚屋さんで天然の鯛を毎日仕入れることができたために続けることができました。




<チェンミーンモイリー>

ココナッツミルクとエビは「THE・南インドのカレー」な感じですが、
こちらもトリバンドラムで習った際、酸味付けに庭になっていた
見たこともない木の実のようなフルーツを使っていたことが印象に残り、
「酸味の後から少し苦味がくる」感じが美味しくて新鮮でした。
日本では手に入らないので、ほんのり甘味と苦味のあるグレープフルーツと
爽快な酸味のレモンを使って再現しました。




<アーンドラプラウン>

このメニューは2013年に1ヶ月だけお店で出したことがあり、
食べた方からのリクエストが多く、どこかのタイミングでもう一度とは思っていました。
ハイデラバードの高級ホテルで食べたエビのドライタイプのカレーには
甘くてコクのある削りたてのフレッシュココナッツに
たっぷりのミントリーフが爽やかな風味を加え、
それをブラックペッパーがきゅっとまとめているバランスが美味しかったので、
メインのカレーとして成立させるためにグレイビーを増やし
カレーソースとして食べれるようなレシピをおこし、再現しました。
 
 

................................
 
 
 
<レモンラッサム>


一番作りやすいトマトラッサムは
トマトのうまみを生かしながら味を仕上げるのに対し、
強い酸味とほのかな苦味しかないレモンで味を作るのは難しい作業です。
ほんのり甘味があって深みを出してくれるダールや
青い香りのフレッシュカレーリーフやコリアンダーリーフ、
そしてショウガやニンニクなど、決定的なうまみを持たない材料を
スパイスとともに何とか仕上げていく作業は、
味のゴールを決めることに対していつも敏感になっていました。
見た目と味と香りが「レモンラッサム」という名前に負けないように
いつもドキドキしながら作っていました。


<クートゥー>
 
ムンダールをベースに刻んだホウレンソウと大根を具材に、
やさしく「滋味深い味」を出せるように意識しました。
たっぷりのホウレンソウを洗い、茎と葉を分け、茎は小口切り、
葉は5mm~10mm角くらいの正方形になるように切っていく毎日の作業に
くじけそうになりながらもホウレンソウを使い続けました。
ケララのあばあちゃんが教えてくれた切り方が
今回のクートゥーの味と食感を決定づけるほど大事な工程だったと分かりました。

 
<パチャディ>
 
甘味のある赤玉ねぎとトマトをたっぷり使ったヨーグルトサラダ。
南インドでビリヤニを食べる際についてくる、
あの名脇役のパチャディをイメージして。


<ピックル>

ここだけは南インドではありません、ベンガルのレシピでした。
マスタードオイルやパンチフォロン(クミン・カロンジ・フェンネル・メティ・マスタード)と
玉ねぎでグレイビーを作ってから、冬~春野菜を中心に漬けていきました。


<山菜のアチャール>

常連のお客様にちょこんとお出ししていた一品。
山ウドやフキ、あかみず、わらびなどを使い、
以前、ネパールでのトレッキングに行ったときに買った
ティムール(ネパールの山椒)でアクセントをつけました。



<山菜のパコラ>
  
ディナーコースの前菜としてお出ししました。
山ウド、こごみ、こしあぶら、うるい、姫竹などの山菜を
南インドの家庭で習った衣の生地をつけ、揚げました。
お好みでティムールとヒマラヤのピンクソルトをつけて。






今回、最も気を使い、時間を使ったことは
「野菜の種類と量」だったかもしれません。

砂の岬では普段から使う野菜の種類が多いと思っていましたが、
この文章を書きながら思い返し、数えてみると、
ミールスでは一日に使う野菜の種類が25種類前後使っていて、
いつも野菜の管理や仕込みに時間がかかっていたことを思い出しました。
 
メインのカレーを入れ替え、いつもより味の管理が増えたことや
野菜の管理や下準備が増えたため、
いつもよりさらに仕込みに時間がかかってしまい、
あまり営業ができませんでしたが、
5年目にして多くの発見があり、
次に進むための準備ができた気がします。



最後に、

食べていただいたお客様、
何度も来てくださった常連様、

そして、
インドで出会って教えてくれた人々に、、


ありがとうございました!
 
 
 


あぁ、、
インドに行きたい。
インドに行きたい。


4週間のインド旅、
最後の1週間は父と合流してのインド。

店の工事のイメージを伝えるために、
毎年毎年、沢山のインドの風景を写真で見せてきた。

数年前から、
「インドいこうかなぁ」
そんなことを、たまに言うようになった父だが、
僕は来ることは絶対にないと思っていた。


今回、
インド行きを決めた父に、
僕が見てきたインド、
僕が好きな部分のインドを、
砂の岬の辿ってきた道を見てほしかった。

そして、
僕はインドが大好きだから、
自分が大事に思う人には、
インドを好きになってほしい。

けど、
僕のそんな強い願いと
少しの不安は
父には関係なかったようだった。



ー夜行列車に乗り、
目覚めた朝、
電気コイルで湯を沸かしコーヒーを飲んだ。
車窓からはインドの大地を3人で眺めた。

屋台のスナックを味わい、
壊れかけの建物の写真を撮って、
小さな商店をはしごをし、
出会った人々と会話をした。




いつみても、
父は楽しそうだった。

とても楽しそうだった。



 


またいつか、一緒に行こう。



インドに来てくれて、ありがとう。



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